再・ゲルマラジオでFM放送を受信したい

ゲルマラジオでFM放送をより大きな音量で聴くことや、遠距離で受信にするには、利得の高いアンテナを使うと有利です。 また、移動先で受信する場合は、組み立て・分解が簡単な構造で、軽量なアンテナが好ましいでしょう。 今回はシミュレーションソフト「MMANA」Ver1.77で設計したアンテナを自作してみました。

2エレ八木アンテナを自作する

2エレ八木アンテナ
導波器(ディレクター)と放射器(ラジエーター)の2エレで構成。

受信周波数は82MHzを中心として、アンテナの地上高は4メートルで50オーム出力することを条件に、大きさを抑えつつ、利得が得られるように設計しました。 設計した2エレ八木アンテナの寸法は、導波器(ディレクター)=1.52m、放射器(ラジエーター)=1.74m、素子間隔(エレメント・スペース)=0.78mです。 その結果、F/Bは3dBですが、SWRは1.05、絶対利得は9.89dBi(自由空間では4.73dBi)のシミュレーション値を得ました。

アンテナの材料ですが、エレメント(ディレクター、ラジエーター)には直径10mmのアルミパイプを、ブームとマストには直径14mmの塩ビパイプを使用しました。 ブームとマストの結合にはチーズを、マストの延長にはカップリングを利用することで、簡単にアンテナの設営と撤去ができるようにしました。

2エレ八木アンテナを分解した様子
ブームはチーズ(T字型の配管結合部品)で結合しています。
導波器とブームの結合状態
塩ビパイプのブームにアルミパイプのディレクターを貫通させました。
アルミパイプの赤線は、ディレクター中央の目印。
強制バランの回路図
1:1強制バランの回路図で、コイルはトリファイラーです。
回路図の黒丸は、巻き始めが同じであることを表現しています。


アンテナの給電部からゲルマラジオまでの引き込み線には、50オームの同軸ケーブル(3D2V)を使います。 八木アンテナは平衡、同軸ケーブルは不平衡な特性であるため、接続にはバラン(平衡・不平衡トランス)も利用します。 自作したものは強制バランと呼ばれるタイプのもので、直径0.5mmのUEWを3本ねじり(トリファイラー)にして、フェライトビーズFB-801-43を3個使いました。

トリファイラの製作状況
3本のUEWをねじるため、電気ドリルを低速回転させます。
もちろん、ペンチ2個でもトリファイラーは製作できます。
トリファイラの製作状況
トリファイラー完成後、被覆がこすれてショートしていないか
確認してから、バランの結線をします。誤結線に注意。
強制バランの使用状況
FB-801-43のフェライトビーズを3個使用。

条件向上で受信距離も改善

受信対象は海抜145.3メートルの城山にある出力1kWのFM局(NHK-FM、FMとやま)です。 2エレ八木アンテナを使い、まずは今まで信号の検知だけで聞き取れなかった、放送塔から水平距離で3.4キロメートル離れた神通川緑地公園の堤防で受信にチャレンジします。 あいにく、受信実験をした日は夏日となり、風もあったため、塩ビパイプのマストが軟化して想定以上にしなることから、予定していたアンテナ高さ4メートルを断念し、2メートルで受信することにしました。 使用したラジオはFMゲルマラジオ(以下「モデル1」)と、FMゲルマラジオ・モデル2(以下「モデル2」)です。

その結果、両方のラジオでFM局を受信できました。音は小さいながらもハッキリと放送内容が聞き取れるレベルです。 モデル2のST-30ですが、その使用で音量が増加することを確認しました。 バランも効果がある様子で、同軸ケーブルに手を触れても、音量の変化は認められませんでした。

ちなみに、2エレ八木アンテナをダイポールに変形運用してみたところ、こちらも受信できました。 アンテナの共振周波数や、今までより地上高が上がったことで、受信できるようになったと推定します。

2エレ八木アンテナ組み立て前の様子
マストとして2mの塩ビパイプを2本用意しましたが、
実験当日は1本だけ使うことに。
2エレ八木アンテナの受信状況
2エレ八木アンテナを組み立てた様子です。
マストは木製のイスに固定し、ブロックを乗せて転倒防止。
FMゲルマラジオ(モデル1)の受信状況
モデル1は同軸ケーブルのBNCをワニ口クリップに変換して接続。
FMゲルマラジオ・モデル2の受信状況
モデル2は微調整を繰り返すことで、モデル1より音量が大きくなりました。
放射器とブームの結合状態
2mm厚のアクリル板に、サドルを使ってラジエーターとブームを固定。
ダイポールアンテナの受信状況
自作した2エレ八木アンテナはその構造上、ダイポールに変形できます。

その後、神通川に沿って北上し、放送塔から水平距離で5.5キロメートル離れた神通川、いたち川の合流地点での受信に成功しました! 音量は注意を払らうことで放送内容がかろうじて聞き取れる程度まで減少しました。 アンテナの地上高が2メートルではなく4メートルであれば、受信距離や音量も異なってくるだろうと考えています。

2エレ八木アンテナの受信状況
ラジオとアンテナの性能アップで受信距離の
自己記録を2.7倍更新できました。