ゲルマラジオでFM放送を受信したい

試作したFMゲルマラジオでは、予備実験によってFM放送帯の同調と復調を確認しています。 しかし、アンテナや電界強度などの受信条件が整っていないことから、FM放送は受信できませんでした。 このため、高利得なアンテナが必要になりますが、波長が3.75メートル(f=80MHz)あるため、3エレメントの八木アンテナでもかなりのサイズになり、住宅事情のため受信実験が頓挫しています。 それでも一度は、実際のFM放送を受信してみたいと思い、放送塔の近くに移動してでも受信しようと考えました。

伸縮式指示棒とFMゲルマラジオ
伸縮式指示棒をロッドアンテナに転用
伸縮式指示棒の接続状況
圧着端子(1.25-5)を利用して接続

当初、実験用の簡易アンテナとして、λ/4のワイヤーアンテナを使うつもりでした。 しかし、100円均一ショップで伸縮式指示棒を見かけ、これをロッドアンテナに転用することを思いつきました。 購入した指示棒は、ニッケルコーティングされた銅製で、約63cmまで伸びるものです。 この指示棒に約30cmのコードを圧着端子を利用してねじ止めし、ゲルマラジオのアンテナ端子に接続します。 FMラジオのアンテナは、やはりロッドアンテナが似合います。

いざ、放送塔へ

城山に建つTV5局、FM2局の放送塔
城山に建つ放送塔。画面左から、富山テレビ&FMとやま、
チューリップテレビ、NHK総合&FM、NHK教育、KNBテレビ

富山県富山市の城山(海抜145.3メートル)には、FM局とTV局の放送塔が集中しており、平野部を見通せる位置に建っています。 放送塔の近くには展望台(しらとり広場)があり、FMとやまの放送塔(富山エフエム放送呉羽送信所、82.7MHz、1kW)から約30メートル、NHK-FMの放送塔(NHK富山放送局呉羽TV・FM放送所、81.5MHz、1kW)から約200メートルと、受信実験に絶好の位置にあります。

風景
(おまけ)展望台からの風景

この展望台に移動し、さっそく、イヤホンを耳に入れ、同調ダイヤルを回すと・・・FMとやまが聞こえました! 放送内容が十分聞き取れますが、アンテナの向きを変えたり手で触れたり、僅かな移動でも音量が増減します。 また、試作時の予備実験ではさほど感じなかったのですが、選択度が甘く、同調ダイヤルを回しても比較的広い範囲で受信してしまいます。 このため、NHK-FMが受信できません。 それならばと、展望台からNHK放送所の敷地入り口まで移動してみると、NHK-FMが受信できましたが、今度はFMとやまが受信できませんでした。 城山には車道(城山スカイライン)のほか、散策周遊路があり自然を満喫しながら歩くことも出来ます。 この周遊路を歩きながら受信すると、おおよそ放送塔2局の中間付近で、AM放送さながらにFM2局が混信して受信する地点があり、この地点を過ぎると1局しか受信できない状況を確認しました。

富山テレビ・FMとやま共用の放送塔
富山テレビ・FMとやま共用の放送塔
受信状況
展望台からFMとやまを受信。
木が茂っており、放送塔がよく見えない。
NHK総合テレビ・NHK-FM共用の放送塔
NHK総合テレビ・NHK-FM共用の放送塔

受信状況
NHK放送所の敷地入り口で受信。
しっかり聞こえます。

河川の堤防でFM放送を受信
井田川の堤防でFM放送を受信
(放送塔から水平距離で約2km)
河川の堤防でFM放送を受信
神通川の堤防では受信できず
(放送塔から水平距離で約3.5km)

今回はFMトランスミッターの電波ではなく、FM放送の受信を実際に確認することが目的だったので、放送塔の間近で受信したのですが、やはり、この簡易アンテナとゲルマラジオの組み合わせで、どれだけの距離まで受信できるか気になります。 時間の都合があったため、とりあえず、2箇所で受信を試すことにしました。 受信実験の候補地は、周囲に障害物がなく、放送塔を見通せる場所として河川の堤防道路を選びました。 まず、放送塔から水平距離で約2キロメートル離れた井田川の堤防道路へ移動したところ、僅かな音量ですが、NHK-FMが聞こえます。 ぎりぎり聞き取れる感じの音量です。 こんな簡易なアンテナで聞こえるのですから、しっかりしたアンテナを利用すれば、間違いなくゲルマラジオの受信エリアになる印象を受けました。 次は、放送塔から水平距離で約3.5キロメートル離れた神通川の堤防道路へ移動しましたが、ここではさすがに受信は確認できませんでした。

今回の屋外移動実験で、正真正銘、FMゲルマラジオで実際のFM放送を受信できました。 また、簡易なロッドアンテナながら、放送塔の間近だけでなく、意外にも2キロメートル離れた場所でFM放送の受信を確認できたことは、成果といえるでしょう。 しかしながら、アンテナ回路の影響かもしれませんが、選択度が悪いことも露見しました。 FM受信もAM受信と同じく、ゲルマラジオはアンテナ回路が重要であると実感した1日でした。