デジタルディップメーターの自作アクセサリー

ディップメーターはLC共振回路、アンテナなどの共振周波数を測定する計器です。また、計測の原理を応用することで周波数カウンター、高周波信号発生器の代用、水晶振動子(水晶発振子)のチェック、微小なインダクタンス・キャパシタンスの測定など、多様に使える測定器です。さらにデジタルディップメーター(以下、「DDM」)では、従来のアナログ目盛り表示に代わり、周波数をデジタル表示します。目盛り表示が不要になった結果、読み取り誤差を防げるほか、測定範囲を変更するプラグインコイルも自由に設計できるメリットがあります。そこで、DDMのメリットを生かしたアクセサリーを自作しました。使用したDDMは、デリカのDMC-230S2(三田無線研究所製)です。付属するプラグインコイル8本を交換することで、0.4〜200MHzをカバーしています。

DELICA DMC-230S2
DELICA DMC-230S2
コイルレンジ(MHz)
200〜80
80〜35
35〜16
16〜7.5
7.5〜3.5
3.5〜1.5
1.5〜0.8
0.8〜0.4

FM放送帯向けプラグインコイル

FMラジオ(76〜90MHz)を対象としてDMC-230S2を使用する場合、プラグインコイルA、Bの2本でカバーすることから、差換えが必要になるため、使い勝手が少々悪いです。そこで、FM放送帯を1本でカバーできるプラグインコイルを自作しました。

コイルを自作する場合、DDMの取扱説明書には約φ2.0〜2.2の線材を使用すると記載されています。管理人CRLの場合、φ2.0ではソケットと接触不良が生じやすく(100円均一のアルミ線では軟らかくてテンション不足を招いた)、φ2.2は入手できなかったので、φ2.3のPEW(ポリエステル・エナメル・ワイヤ)を使用しました。写真のように試作したコイルは、60〜163MHzをカバーしました。

ちなみに、DDMの取扱説明書にはコイルの自作例が記載されています。φ2.3PEWで試したところ59〜159MHzをカバーできました。

FM放送帯向けプラグインコイル
左がオリジナル、右が取扱説明書に記載のコイル

SG化アダプター

微小なインダクタンスの測定状況
インダクタンスの測定状況。Cのリード線が長く誤差が出ると反省。
今回は微小なLを測定したが、同じ原理で微小なCも測定できます。

DDMをSG(信号発生器、signal generator)として利用する簡易アダプターを自作しました。今回は80MHz前後を出力インピーダンス50オーム程度で利用したいと考えています。そこで、プラグインコイルの近くに0.1μHのピックアップコイルを配置し、特性インピーダンス50オームの同軸ケーブル(3D-2V)とBNCコネクタを接続することで、出力を得ます。

プラグインコイルはφ2.3PEWを、ピックアップコイルはφ1.6PEWを単二形乾電池に巻きつけて作りました。プラグインコイルは2回密着巻きで51〜136MHzをカバーします。0.1μHのコイルは、値が微小なため普通のLCRメーターでは計測できないので、DDMも併用して測定します。

まず、LCRメーターで97pFと計測したセラミックコンデンサ(表示は100pF)をコイルに接続し、共振周波数をDDMで確認します。共振周波数の計算式から、今回の場合は51.1MHz程度になるようにコイルの形状を調整すれば、インダクタンスは0.1μHだと確認できます。ほぼ0.1μHに整ったところで、立ちラグ板にコイルと同軸ケーブルを半田付けしました。

プラスチックケース内に2つのコイルを配置して完成です。計測に用いるときは、特に周囲の影響を受けないようDDMを起立させて、アダプターを上方に配置すると良いようです。シールドを考慮する場合は、スチールケースが必要でしょう。

SG化アダプター
SG化アダプター「FM放送帯50Ω出力アダプター」の外観。
ケースはタカチ電機工業製のSW-85。色と大きさがDDMにマッチ。

SG化アダプター内部の様子
ケース内部の様子。シンプル。