AM6局プリセット式ゲルマラジオ

ところで、カーラジオなどは、事前に受信対象のラジオ局を登録しておき、ボタン1つで選局できるようになっています。 そこで、同様な使い勝手のあるゲルマラジオを試作しました。ダイヤルチューニング不要、スイッチ1つで受信する放送局を選べるゲルマラジオです。

ゲルマラジオ
前面パネルに6つのプッシュボタンが並ぶ
ゲルマラジオ
アンテナとアースの接続にプッシュターミナルを使用
回路図
AM6局プリセット式ゲルマラジオの回路図

選局には、店頭で見かけて購入した、6連のプッシュ式スイッチ(メーカー、型式不詳)を用いました。 また、本体ケースはスイッチがバランスよく収まる大きさがあり、ふたが片開きするプラスチックケース(タカチ電機工業製OP-150G、W120×H50×D150)を使用しました。 このケースは、スイッチのプッシュ操作に耐える強度があるほか、ふたが簡単に開くため、後述のトリマー調節を気楽に行なえるメリットを考えて選びました。

次に、このケースに収まる最も大きい直径の同調コイル(ソレノイドコイル)を設計します。 同調コイルは、写真のフィルムケース(直径30mm)に、線径0.26mmのUEW(ポリウレタン銅線)を125回巻き、約265mHになりました。 また、約13巻きごとに9本のタップを出し、使用するアンテナに合わせて接続できるようにしました。 フィルムケースのふたについては、アクリル製のねじで本体に取り付け、同調コイルの本体固定に利用しました。

このラジオの趣旨では、同調の調整を一度行なえば、その後は不要になることから、バリコンを使わずトリマー(半固定コンデンサー)を使用しました。 残念ながら入手できたトリマーの容量の関係から、目的のAM放送局を受信するため、必要に応じてセラミックコンデンサーを並列に追加しました。 トリマーの調節には、調整ドライバー(高周波ドライバー。全体はプラスチック製で、先端部分のみ金属板を使用したもの)を使います。 試しに、金属製の精密ドライバーで調節を行なうと、トリマーにドライバーを挿し込んだだけで容量が変化し、同調周波数が変動します。 また、使用するアンテナに合わせて同調コイルのタップ切り替えを行ないます。 タップとトリマーの調節を交互に行い、感度と選択度のバランスが整ったら完成です。

他のゲルマラジオにはない感覚?

ボタンを押すだけで、ゲルマラジオの選局がズバッと切り替わるのは、なかなか気持ちいいものです。 ゲルマラジオは音量が小さいことでチューニングに神経を使うこともありますが、このプリセット式は他のゲルマラジオでは味わえない、実用的な感覚が楽しめます。

さて、東京では受信対象として6局(NHK第一、NHK第二、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、ラジオ日本など)がありますが、 管理人が住んでいる地方では3局(NHKの2局と地元民放1局)位しかなく、辛いところです。 残念ながら、6局プリセットの性能を持て余している状態です。

ゲルマラジオ
ふたを開いた様子
ゲルマラジオ
トリマーが6つ並んだ基板
ゲルマラジオ
同調コイルの枠はフィルムケースを利用