カドラのゲルマラジオ

バーアンテナ4本をラグ板に固定
ラグ板に固定された、そびえ立つ4本のバーアンテナ!?

ゲルマラジオは増幅回路を持たないため、どうしても音量が小さくなりがちです。 外部アンテナ、アースを使わず、バーアンテナのみで電波をキャッチして受信しようとすると、なおさらのことです。 音量を増やす方法はないかと色々と考えているうちに「何台もゲルマラジオを接続すれば、それだけ音量が増えるかも?」とアイデアを浮かばせる人は多々いると思います。 でも実際に試してみたという報告例が見当たらないので、試作してみましょう。 とりあえず、4台のゲルマラジオを接続してみました。 題して「カドラのゲルマラジオ」です。

4台のゲルマラジオを1台にまとめる

4台のゲルマラジオを統合した回路図

実際に試作する回路を考えてみましょう。 まず、前記のアイデアによる回路として、4台あるゲルマラジオの出力を直列に接続し、一つのイヤホンに出力を集中させます(回路図1、2)。 これでも良いのですが、ダイオードを4本も使い続ける必要はあるのでしょうか?  4台分のゲルマラジオの検波を1本のダイオードで代表させましょう(回路図3)。 また、バリコンが4つあるので、このままだと同調操作を4回も繰り返さなければいけないので、使い勝手がとても悪いです。 バリコンも1つにまとめましょう。 同じ容量のコンデンサーが4つ直列になっていると見なし、バリコンの容量を1/4に減らせば等価になります(回路図4)。 結局、バーアンテナを通過する電波によって、バーアンテナに誘導される電圧が4倍になる回路に整理されました。

このゲルマラジオで大切なことは、バーアンテナの指向性をそろえて配置することです。 今回は個々のバーアンテナが独立性を保つよう、ある程度離してコアの中心が正方形の位置に来るように配置してみます。 また、バーアンテナ同士の結線は、誘導電流の向きが揃うように注意します。

本当にカドラのゲルマラジオは性能が良いのか?

バラック状態のゲルマラジオ
性能実験用に回路を組み立てた様子。
ダイオードは光電効果を防ぐため、黒色プラスチックケースに納めています。

実際、バーアンテナが増えると、ゲルマラジオの性能はどれだけ向上するのでしょうか。 試作前にバラックの状態でテストしてみます。 使用したバーアンテナはPA-63Rでインダクタンスは360μH、ポリバリコンはストレート式AMラジオ用のもので、容量は260pF程度です。 バーアンテナを2本、3本、4本と増やすごとに、220pF、100pF、56pFとセラミックコンデンサーを直列に追加し、容量の可変範囲を調節します。 バーアンテナの使用本数とセラミックコンデンサーの切り替えは、ワニ口クリップを付けたコードを利用します。

バーアンテナPA-63RVC(最大値260pF)共振周波数
本数インダクタンス追加容量合成容量
1本360μHなし260pF520kHz
2本720μH220pF119pF544kHz
3本1080μH100pF72pF570kHz
4本1440μH68pF54pF508kHz

性能実験は周波数738kHz、出力5kWの電波塔から約90m離れた場所で出力電圧を比較しました。 この際、地面からの高低差や人体の接近などで大きく電圧が変動することから、測定条件を同一にするため、地面から約20cm、ラジオから1メートルほど離れてデジタルマルチメーターの表示を読み取り、測定します。 その結果、バーアンテナ1本で2.0mV、3本で10.7mV、4本で14.5mVと、使用本数が増すほど出力電圧も高くなりました。 また、聴覚上も音量が増えていることから、バーアンテナを1本から4本に増えたことによる、性能向上を確認できました。

なお、バーアンテナの本数と出力電圧がきれいに比例しないのは、バーアンテナの個体差による影響と、ラジオを地面に近い場所に置いたため、バーアンテナ個々の地面に対する高低差(2本目と3本目が地面側、1本目と4本目が上空側の配置)による影響とが複合しているかと推察しています。作品の性能測定ではなく、純粋にバーアンテナと出力電圧の関係を確認するならば、バーアンテナの地上高をそろえた方が良いでしょう。また、バーアンテナ2本の電圧を測定できなかったのですが、自宅へ戻って確認すると、セラコン220pFの容量が抜けていました。セラコンの使用にこだわらず、バリコンだけ接続して測定すれば良かったのですが、後の祭りです。

受信実験の状況
5kW局の放送塔から約90m離れた場所です。
受信実験の状況
地上高の違いで出力電圧は大きく変化します。

高性能を小型で目指すならバーアンテナ

カドラのゲルマラジオの回路図

回路図4に準じて組み立て直します。 PA-63Rを4本直列にした場合のバリコンですが、スーパーヘテロダイン式AMラジオ用の2連ポリバリコンで、局発側(トリマー可変で最大値が実測62.9〜68.7PF)を利用するとAM放送帯をカバーして都合が良いので、これを利用することにしました。 バーアンテナの配置は、性能実験で使用した配置を変更せず、そのまま試作しています。


管理人CRLの受信地は、5kW局から約14km離れています。 この条件でも、ループアンテナを使えばゲルマラジオでも受信可能です。 バーアンテナを使用するゲルマラジオとしては、カドラのゲルマラジオは高性能ですが、 これだけ離れていると、さすがにカドラのゲルマラジオ単独でも受信できず、外部アンテナを必要とします。 コイルの断面積が同じであれば、ループアンテナよりバーアンテナの性能が良いかもしれませんが、 大きさを問わなければ、容易に断面積を大きくできるループアンテナにはちょっと敵わない、というところでしょうか。

外部アンテナを使うなら、バーアンテナ1本でも十分にゲルマラジオは作れます。 それでも外部アンテナを使用せず、できるだけコンパクトなゲルマラジオを実現しようとするならば、高性能なバーアンテナを検討していくことになります。 例えば4本のバーアンテナを使用した場合、接近させて同一平面上で平行に配置すればコンパクトになりますが、受信性能は変化するのでしょうか。 それとも、4本を一直線上に並べた方が良いのか、色々な配置方法が考えられます。

カドラのゲルマラジオ
ゲルマラジオ4台(quadra)なので「カドラのゲルマラジオ」です。
ゲルマラジオの配線状況
遊んでいるバーアンテナのタップもラグにはんだ付けしてショート防止。
ダイオードはポリバリコンとイヤホンジャックの間を空中配線しています。