磁界検出型FMゲルマラジオ

磁界検出型FMゲルマラジオ
磁界検出型FMゲルマラジオです。
「周囲に目立たず受信実験したい」ってコンセプト、皆さんは有りですか?

FMゲルマラジオの受信には、性能の良いアンテナは欠かせず、大きなサイズになりがちです。屋外で大きなアンテナを苦労しながら扱っていると、ほとんどの人は状況を察知(本当は無視?)してくれますが、中には冷たい疑いの視線を送ってくる人と遭遇するかもしれません(悲)。FMゲルマラジオ・モデル3は、ロッドアンテナを本体と一体化した扱いやすい作品ですが、受信するため伸ばしたロッドアンテナの存在感は大きいです。「周囲に気兼ねせず、目立たずにゲルマラジオのFM受信を経験してみたい」そんなコンセプトで設計したFMラジオを試作してみました。

アンテナをファイルケースへ入れると目立たない!?

当サイトでFMゲルマラジオを発表後、チャレンジされる同好の方も徐々に増えている様子で、より良い受信結果を得るために、使用されたアンテナとして1λループ、ダイポール、八木アンテナなどの実績があります。これらのアンテナが1メートル以上の寸法を必要とするのは、電波の波長に依存した寸法で共振するからです。今回の設計コンセプトでは、目立つ主要因であるアンテナの大きさを小さくすることが必須事項になります。

使用実績のあるアンテナを改めて考えてみると、波長に依存した寸法を必要することで、電界を検出している点が共通しています。電波は電界と磁界で構成されており、磁界を検出するアンテナであれば、波長に依存した寸法の束縛から解放されます。そう、同調コイルに磁界型のループアンテナを使えばコンパクトになるのです。

磁界ループの製作状況、曲げ加工
銅パイプはホームセンターで購入。UM−2を利用して、素手でゆっくりと折り曲げました。
磁界ループの製作状況、末端処理
銅パイプをペンチで切断すると平らにつぶれ、はんだ付けが少し容易になります。

今回試作したループアンテナは、直径3ミリメートルの銅パイプを用い、全長は65cm(λ/6程度)で1巻きです。18×14.5cmの方形に加工しました。管理人CRLの考えでは、FM放送受信用の磁界型ループアンテナは、これ位が無難なサイズであり、大きなサイズになると同調が困難になります。確かにもう少し大きなループでも大丈夫なのですが、ループアンテナ自体が持つ浮遊容量の影響は無視できず、インダクタンスの増加によって自己共振周波数がFM放送帯まで低下すると、バリコンを可変させても同調の用を成さなくなるからです。全長65センチメートルのループでも、わずか数pFの追加でFM放送帯に同調します。バリコンは2連FM用ポリバリコン(20pF×2)を直列にして使います。


ループアンテナの固定状況
結束バンドを使って、ループアンテナをケースに固定しています。

これは僅かながら浮遊容量を増やす原因にもなるのですが、あえてループアンテナをプラスチックケースに入れたいと考えました。使うケースは、100円均一ショップで売られていた、B5判のファイルケース(材質はポリプロピレン)です。これで筆記具も一緒に手にしていれば、たとえイヤホンを使っていても、不審者扱いされずに済むかもしれません(笑)。

磁界検出型FMゲルマラジオの部品接続
はんだ付けを終えてから、ケースに取り付けています。
イヤホンジャック側は20W、ループアンテナ側は40Wのはんだこてを使用しました。

ダイオードは中波ラジオの検波で使うゲルマニウムダイオードと同じです。ダイオード1本でFMを簡易的に復調するスロープ検波を行います。部品が揃ったら、ケースに固定する前に全てはんだ付けします。これは、はんだ付けの熱によってケースの破損を防ぐためです。ダイオードはポリバリコンとイヤホンジャックの間を空中配線させました。はんだ付けを終えた後、ループアンテナ、ポリバリコン、イヤホンジャックをケースに固定すれば完成です。

磁界検出型FMゲルマラジオの部品接続
二つのマイナス溝を廻してトリマーを最小容量に可変させています。

ファイルケースに取り付けた状態の共振周波数をデジタルディップメーターで確認したところ、ポリバリコンのトリマの電極が半分重なった状態で、59〜108MHzでした。トリマーの容量を最小に設定したところ、62〜134MHzになりました。

小さなループの魅力と代償

ラジオに詳しい方はお気づきだと思います。 本来、磁界型ループアンテナはその断面積が大きいほど、巻き数が多いほど誘導される電圧が高くなります。今回の試作品は、AMラジオ受信用の一般的なループアンテナと比べると、ループ断面積も巻き数も圧倒的に少なく、受信には不利なアンテナです。また多くの場合、FM局の送信出力はAM局より小さいので、さらに不利となります。それでもアンテナの運用で周囲に気兼ねせず、手軽にFM放送のゲルマラジオ受信にチャレンジできるのは魅力です。放送塔近くの近距離受信用として、最も簡単なFMゲルマラジオと言えるでしょう。


磁界検出型FMゲルマラジオ
回路構成は写真で見たとおりですので、回路図は省略します。

簡単に製作したため、復調はダイオード1本のスロープ検波を利用していますが、部品の追加でワイズ検波へ変更も可能です。また、2連FMポリバリコンのステーター(中央の端子)を利用して、フォスターシーレー、レシオ・デテクタにチャレンジしてみるのも、面白いかもしれません。


AM局と異なる指向性を体験

磁界検出型FMゲルマラジオ
FM局近くの城山公園でベンチに置いて写真撮影です。
風による転倒防止のため、ケースをバイスで挟んでいます。
磁界検出型FMゲルマラジオ
受信実験中、合計で約20名が側を通過しましたが、トラブルは
ありませんでした。そんな意味では、見事に目的を達成できました(笑)

後日、放送塔に近接した場所において、FM放送(FM富山、82.7MHz、1kW)の受信に成功しました。 ラジオを身体に引き寄せると、ボディエフェクト(身体の接触や接近による電気的な影響)を強く受けます。 超短波では身体に対する電磁波の減衰、身体とのストレーキャパシティによる同調周波数の変化も無視できないようです。 受信するには少し腕を伸ばし、身体から離すのがコツのようです。 興味本位で試作しましたが、小口径の1巻きループであるため、予想のとおり感度が悪く、使い勝手のコツも必要ですから、放送塔周辺以外ではお勧めできない作品です。

しかし、面白い体験もできました! 通常、磁界検出型のループアンテナの場合、ループ面に対して水平方向に指向性がありますが、ある受信ポイントでは、ループ面を放送塔に向けると受信音量が大きくなるのです。 この原因について、当初、AM局とFM局で偏波が異なるためかな?と勘違いしていましたが、どうやら電界を検知していたと考えるのが正しいです。つまり、1波長ループと同じ動作をしていたと考えるのが妥当です。FM局が水平偏波である場合、磁界を検知するならば、ループ面を大地と平行に配置するのが正しい使い方になります。
(2011/04/24追記、28改正)

磁界検出型FMゲルマラジオ
ループ面の垂直方向に放送塔があり、音量が最大になります。
磁界検出型FMゲルマラジオ
放送塔に向かって水平にループ面を配置すると、音量は最小になります。