出力回路3

クリスタルイヤホンの種類について説明します。

圧電セラミックとロッシェル塩

クリスタルイヤホンで使用する圧電素子として、以前はロッシェル塩が用いられていました。 ロッシェル塩は感度が高いものの、潮解(湿気で結晶構造が崩壊してしまう現象)する欠点があり、現在は製造が中止されています。

代用品として、圧電セラミックを用いたセラミックイヤホンが販売されています。 外見がそっくりなこともあり、セラミックイヤホンもクリスタルイヤホンと呼ばれて販売されています。 しかし、中の振動板を覗くと、セラミックイヤホンは平らになっていますが、ロッシェル塩のクリスタルイヤホンは中央に突起があります。 古い文献を除くと、特に断りがない場合は、クリスタルイヤホンとはセラミックタイプと考えてよいでしょう。

圧電セラミック、ロッシェル塩はいずれも圧電素子であり、電圧を加えると大きさが伸び縮みする性質(歪みを生じる性質)があります。この伸び縮みを振動板に伝えることで、音声信号を音に変換しています。音質に見劣りがあるものの、他の音響部品よりインピーダンスが高く、感度が大変高い特徴があります。

クリスタルイヤホン
外観はほぼ同じ
(左がセラミック、右がロッシェル塩)
クリスタルイヤホン
表示に違いがある
(左がセラミック、右がロッシェル塩)
クリスタルイヤホン
内部の振動板に突起があるものがロッシェル塩
(左がセラミック、右がロッシェル塩)

マグネチックイヤホンとの違い

テレビやオーディオ機器で使われているスピーカーやイヤホンの基本構造は、コイル、永久磁石(又は電磁石)、振動板で構成されています。 コイルに音声信号を流すことで発生した磁気が、永久磁石の磁気と作用しあうこと(磁力の引き合いと反発)で振動を生み出し、この振動を振動板に伝えて音に変換します。 磁気の作用による振動を振動板に伝える構造などによっても名称が異なりますが、大きくは、永久磁石を用いるマグネチック式、電磁石を用いるダイナミック式に分類できるでしょう。 音質が良いのですが、インピーダンスは一般に低く、音声信号はある程度大きい電力が必要な特徴があります。スピーカーやイヤホンのインピーダンスは8〜16オーム、オーディオ用のヘッドホンは16〜32オーム(片耳)などが散見されます。

ところで、オーディオ装置等に接続するスピーカーやヘッドホンは、オーディオメーカーがインピーダンス値を指定しています。 これは、オーディオ装置等のインピーダンスと、スピーカー等のインピーダンスが同じ値、言い換えると、出力側のインピーダンスと入力側のインピーダンスが同じ値であれば、電気信号が最も効率よく伝わるためです。 異なる場合はトランスを用いて、インピーダンス変換する方法があります。 入力側と出力側のインピーダンスを調節してそろえる事を、インピーダンスマッチングといいます。

ゲルマラジオの検波回路の出力インピーダンスは、高めの値(一概には言えませんが数キロ〜数十キロオーム)なのです。 クリスタルイヤホンのインピーダンスも同じく高めの値であることから、トランスを使わず、検波回路に直接つないでも、比較的効率よく音声信号が伝わるのです。 また、オーディオ用のヘッドホンをそのままゲルマラジオにつないでも、ほとんど鳴らない理由の一つとして、音声信号が弱いほかに、インピーダンスの違いが大きくて信号の損失が発生しているからと考えられます。


【参考】 セラミックイヤホンの特性 、 クリスタルイヤホンの特性 、 出力回路2(セラミックイヤホンの構造)
ゲルマラジオでヘッドホン、スピーカーを鳴らす(インピーダンスマッチングの事例)


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